「優里!」
病室に入ると、皋の嬉しそうな声が響いた。
最近はあたしのことが気配でわかるらしく、あたしが入った瞬間いつも名前を呼んでくれた。
「あ、甘い匂いがする。ねぇ、何持ってるの?」
「ふふ、今日は学校の帰りにドーナツ買ってきたの。食べれる?」
「ドーナツ?食べる〜♪」
皋は嬉しそうに微笑み、あたしがドーナツを手渡すと、落とさないようにしっかり握って、ゆっくりと口に運んだ。
チョコレートが周りに塗られたドーナツだったから、口の周りが必然的に茶色くなる。
「美味しい!」
「良かった。まだあるから、どんどん食べて」
「良いの?ありがと」
口をチョコレート塗れにして、皋は笑った。
まるで幼児のようだった。