「なんてね〜!優里に限ってそんなこと無いと思うけど、あまりため込むの良くないよ〜」
明菜は、あたしの動揺に気付いてないのか、再び前を向くとスキップするように軽い足取りで歩いていってしまった。
あたしは茫然としていたが、やがて明菜があたしを呼ぶ声に我に返り、そのあとを追って走った。
皋といい、明菜といい、
無意識に人を見透かすヤツなんて、本当に居たんだ──……
あたしは、明菜を邪険に扱ったことを、少しだけ後悔した。
明菜はあたしの方を振り返ると、ほとんど何も入っていない革製のスクールバッグを振り回した。
擦り切れて使い込まれたようにぺしゃんこのそれは、くるりと宙を舞った。
「この後なんか予定ある〜?ドーナツ食べにいこうよ〜♪」
妙に間延びした明菜の口調は、何となく嫌いじゃない。あたしは、病院に行く前に皋にドーナツでも買ってやるかと思いながら、「行く行く」と返事した。