そして、日にちが流れ、夏休みも中盤となったある日。

 俺は布団の中で、心地よい惰眠をむさぼっていた。

 暑い中、朝方にクーラーをつけて寝るのは最高の気分だ。
 
 ピンポーン。
 
 チャイムが鳴り、訪問者の到来を告げた。こんな朝早くから誰だろう。
 
 新聞の勧誘かもしれない。あるいはNHKの集金か。
 
 俺はとりあえず、布団から一歩も動かずに外の様子をうかがう。っていうかしつこく寝る。
 
 ピンポーン。
 
 またチャイムが鳴った。しかし、これしきのことでくじけては、心地よい睡眠はとれまい。

 無視することにする。
 
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!

「だーっ、うるさいっ!」

 俺はたまらず飛び起きて、玄関に向かった。

「誰だっ」

 勢いよくドアを開ける俺。

 そこには、星空をはじめとする四人が、出発支度を整えて立っていた。

 対するは、Tシャツ一枚に短パンの俺。おまけに寝癖つき。

 四人の冷たい視線が俺に突き刺さる。

「あれ……もしかして……今日出発?」

 俺は四人を指差しながら言った。

「他にどんな理由で……」

 気のせいか、星空の肩が怒りに震えているように思える。目も怒ってるし。

「朝からこんな格好で迎えに来るんだこのバカタレーッ!!!」

 星空から怒りのストレートがとんだ。胸の辺りに食らう俺。

「おわっ、悪かった悪かった。すぐ支度するから」

「当たり前だっ、このボケ!」

 俺は慌ててドアを閉めたが、ドアの向こうからも怒りの声は延々と続いていた。

 気のせいか、そのうち95%以上は星空の声だったような。
 
 そして三十分後、俺はようやくみんなの前に顔を現した。

 現すと同時に星空のボディーブローの洗礼を受けた。

 やつはバスケ部じゃなく、ボクシング部に入ったほうがよかったんじゃないかと思う。