そして、二週間が過ぎ、今日は期末テスト最終日。

 これが終わると、うちの高校は試験休みに入る。

 終業式だけは登校日となっているが、気分的にはもう夏休みだ。
 
 最後の科目が漢文であることもあって、試験終了三分前には、まじめな一部の生徒を除いては、もうみんなテストのことなど頭から抜けてしまっている。

 俺はもちろん大多数組のほうだ。
 
 時間が近づき、心の中で指を折ってゆく。

 その指がなくなったとき。
 
 カラーン……カラーン……。

 チャイムの音がして、答案が後ろから集められ、試験官が用紙を回収していく。

 続いてホームルームになったが、もう誰も教師の言うことなど聞いていない。

 教師がホームルームの終わりを告げたとき、教室は一斉に賑やかになった。

「よーし、夏休みだっ!」
 俺は両手を高々と天に掲げて、叫んだ。

 その隣で、黙々と教科書をかばんに入れる知。

「さて、帰るか」
 知は普段どおりにぼそりと言う。

「おまえには感動というものがないのか」
 あきれたように俺は言った。

「ああ、楽しい夏休みだなあ」

 知が感動のこもらない声で言ってくる。ちなみに顔は真顔。

「じゃ」
 教室から出て行こうとする知。

「待て」
 知の後ろ襟を、俺は強引につかんだ。

「今日、夕食は一緒に食うんだろ?」

「ああ」

「じゃ、そのとき、例のプラン話し合うからな」

「わかった」

 知はそう言うと、そそくさと帰っていった。