そして、部活(といっても、ただ部室でだべってるだけだが)が終わり、家路に着く。

 夕食を食べたあとで、俺は達也の部屋に行った。

「まあ入れよ」

 扉を開けて迎え入れる達也。

 そこは、相変わらず何もない部屋だった。

 茶もコーヒーも出てこないので、俺は自分専用のアイスコーヒーを持参していた。

 達也が物欲しげな目でそれを見ていたが、無視する。

 やつには自立を期待したいところだ。
 
 その後、旅行先をどこにするかで、俺と達也の間で激論が交わされた。

 本格的な登山を主張する達也に対し、避暑をターゲットに置く俺。

 結局、候補は三つに絞られた。

 この三つを参加者に見せて決を採るということで、意見は固まった。

「ところで、知ってるか祐介。うちのクラスでは、穂波ちゃんって結構人気高いんだぞ」

 一段落つき、俺のアイスコーヒーも空になった頃、達也が言った。

「ああ、だろうな」

 俺はそっけなく言う。

 実際、穂波はわりときれいだ。

 顔立ちは整ってるし、スタイルもバランスが取れている。

 気立てもいいし、人気にならないほうがおかしい。

「いいのか、祐介」

 からかうような目で、達也は俺を見る。

「何が?」

「捕まえとかなくてもさ」

「別に、いまさら」

 俺は軽くかわすことにする。

 そういえば、達也は例の秘密を知っている、数少ない人間だ。

 たぶん、この高校内では、俺と穂波を除けば唯一といっていいと思う。

 だが、本気で「いまさら」だった。

「まあ、おまえが決めることだから、俺は何も言わんけどさ」

「だったら、はじめから言わないでくれ」

 ちょっとぶっきらぼうになる俺。

 いまだにその話が出ると、俺は不機嫌になってしまう。

 大人げないとわかってはいるが、自分でも抑えられない。