俺は早速、聞き取り調査を開始した。

 まず最初に、穂波に聞いてみた。

「さうす・りばてぃーのみんなで、夏休みに遊びに行こうって話があるんだが、穂波も行かないか?」

「うん、いいよ。どこに行くの?」

 掃除中だったので、穂波は黒板消しを手に答えてくる。

 なお、なんで俺が掃除時間中に、よそのクラスにいるのかについては、詮索しないように。

「海か山ってとこかな。どっちがいい?」

「私はどっちでもいいよ。みんなが行きたいほうでいいから」

 予想通りの答えが返ってきた。

 穂波が強く自己主張するシーンというのも、これまた想像できない。
 
 続いて、掃除時間が終わってから、教室内で星空に聞く。

「星空、みんなで山と海のどっちかに行こうって話があるんだが、行かないか?」

 いまさら、みんなというのが誰かを説明する必要はないだろう。

「うん、行く行くー」

 笑顔で二つ返事の星空。

 今日の星空はどうやらご機嫌のようだ。

「星空は海と山のどっちがいい?」

 星空はちょっと考えて、そして言った。

「私は山かな」
 これも予想通り。

「水着姿に自信がないんだろ?」

 軽く言った俺の頭を、星空の持っていた教科書が直撃した。

 しかも角。

 ごち、と音がして、目の前に火花が散る。

「いてっ!」
 俺は思わず悲鳴を上げた。

「どっから、そういうデリカシーのないセリフがでてくるのよ」

 さっきの笑顔はあっという間に霧散し、星空は口を尖らせた。

「このきれいな口から」

「もう一度殴ってあげようか?」

 星空は教科書を左手でとんとんと叩く。

「いえすいません姫様」

 俺は素直に詫びを入れた。