そのとき、店員が注文を取りに来た。

「えっと、とんかつ定食」と、俺。

「私は、五目そばの和風セット」これは穂波。

「私、メキシカンピラフ。それに、食後にストロベリーパフェを」
 最後に見由が言った。

 店員がメニューを下げて、帰っていく。

「甘いのと辛いのの混合メニューだな」
 俺は見由に言う。

 この子が辛い物好きなのは知ってたけど、甘いものも食べるとは意外だ。

「刺激が好きなんですよ。お兄ちゃんは、刺激嫌いですか?」

「嫌いじゃないけど、ほどほどがいい」

「私も……こないだまでは辛い物好きだと思ってたんだけど」
 穂波は語尾を濁す。

 先日のマカロニグラタン事件(仮称)が、彼女にはかなりこたえたらしい。

 もともと辛い物があまり好きではない俺にとっては、たいしたショックでもなかったが。

 とりあえず、味覚は十人十色だということだけは確信した。

「そういや、こないだの穂波たちの料理はうまかったよ。えび豆腐のやつ」

「ありがとう」

 穂波と達也のコンビは、ロールキャベツと、えび豆腐炒めなる創作料理を出してきた。

 豆腐の炒め物? と、最初は俺も半信半疑だったのだが、これがなかなかうまい。

「あれ、どっちがどっち作ったの?」

「完全に分担してたわけじゃないんだけど、主に私がえび豆腐のほうで、達也君がロールキャベツかな」

「だと思ったよ。達也って、料理の腕はあるけど、どう考えても創作料理ってタイプじゃないもんな」

「あはは、それはそうかも」
 そう言って笑う穂波。