それから三週間ほどが過ぎ、学園にもようやく慣れてきた頃。

 六月も後半に入ると、梅雨になる。

 梅雨の時期は、憂鬱である。

 どれくらい憂鬱かというと、「憂鬱」という漢字がどんな漢字か気になってしまうくらい。
 
 そんなある金曜日、俺は知に呼び出された。

 用件は、美術部のことだという。

 珍しく部室に集まろうとする俺たち。
 
 しかし、美術部の部室は長年使用されておらず、ほこりまみれであったため、やむなく食堂でミーティングを行うことになった。

「話というのは、学園祭のことなんだが。昨日先生に呼ばれてな」

 食堂の隅のテーブルで、から揚げ定食を食べながら、知が言った。

「学園祭? 10月にあるやつか?」

 希望が丘学園では、10月に全校を挙げての学園祭がある。

 通称希望祭。

 来夢さんに聞いたところによると、各部やクラスごとにそれぞれ展示会などを行い、結構華やかになるらしい。

 運動部は普段の大会の成果なんかがあるから、学園祭ではそれを発表するだけでいい。

 しかし俺たち文化部は、この学園祭の発表次第で、部に対する学校と生徒の評価が決まるといっても過言ではない。

「そこで、俺たちも何かしら部活の成果を発表しなければならないことになった」

 やはり来たか、と俺は思った。部を作るときから、そんな気がしてたんだ。

「発表しないと、どうなる?」

「来年の予算がなくなる」