その後、俺たちはハンバーグとにんじんのグラッセの調理に取り掛かった。

 来夢さんもそれを手伝ってくれる。

 驚いたのは来夢さんの手際のよさで、包丁がまるで体の一部のように動いていた。

「すごいでしょ。来夢さんは、バスケ部でも随一の料理上手なのよ」

「星空が威張ることじゃないと思うけどな。でも、確かにすごい」

 俺の包丁が立てる音が、「トントントン」だとすると、来夢さんのは「トトトトト」って感じだ。

 包丁が高速で回転するような感じといったらいいだろうか。

 ちなみに星空の包丁は「げしげしげし」って感じだと思う。

 切るというよりは、削ってる感じ? 

 まあ誰でも最初はそうだろうけど。

 俺も、実家で多少やってたからできるだけの話だ。

 そして、料理が運ばれる。

 昨日の事件で疑心暗鬼に陥っていたみんな(二名をのぞく)は、おそるおそる料理に手をつけた。

 でも、一口食べてからは、食が進むのも早かった。

「ごちそうさまでした」
 見由が丁寧に手を合わせる。

「おそまつさまでした」などと言っているのは、知。

「それ、敬語の使い方間違ってるぞ」

 とりあえず注意しておく。たぶんわざとだろうけど。

 料理の感想を聞くと、お世辞も入ってるのだろうが、まあまあ好評だった。

 そんな風にして始まった料理当番制。

 そのときは、まさかこれが一年以上も続くなんて、思ってもいなかった。