「ふうん。でも、そりゃ勘違いだな。女の子を背負ったのなんてあれが初めてだよ」

「そうなんだ」
 納得したように言う星空。

 俺は斜め後ろに立っているせいで、彼女の表情まではわからない。

「……背負われたことはあるけどな」
 俺はポツリと言った。

「ん?」

 小声で言ったせいか、星空には聞き取れなかったらしい。

「いや……なんでもない」

 言い直すのが恥ずかしく、それきり黙る。

 それ以上、星空は聞き返してこなかった。
 
 やがて、皮はむき終わった。俺はゆっくりと星空の手を離す。

 途中から、妙に星空は素直だった。

「二人とも、調子はどう?」

 かちゃりとドアを開けて、来夢さんが入ってきた。

 来夢は星空を見ると、不思議そうに聞いた。

「あら、どうしたの星空。顔が赤いわよ?」

「え、ええ。この部屋、ちょっと暑くて」

「そうか?」

 星空から肘うちが飛んできた。

 見事わき腹に命中する。

 手を握られて赤くなる星空と、肘うちを食らわせる星空。

 どちらが本当の彼女なのだろう。