「まあいい。とりあえず何か作るぞ。星空は、何作れる?」

 星空はうつむきながら、指折り数えた。

「えっと……目玉焼き、玉子焼き、それにスクランブルエッグも」

「卵料理ばっかりだな」

 俺が言うと、星空は顔を赤らめた。

「要は、料理やったことないんだろ?」

 星空は俺の顔をきっと睨んだ。

「何よ。女が料理できなきゃいけないっていうのは男の偏見よ」

「男だとか女だとかじゃなく、人間のスキルとして持つべきだ」

「くっ……」
 星空は目を怒らせ、肩を震わせていたが、それ以上言い返してはこなかった。

 今日はどうやら優位に立てそうだ。

「じゃあ、今日はハンバーグでも作るか。ハンバーグは俺が作る。星空は、にんじんのグラッセとスクランブルエッグ担当ね」

「そんな無茶な」
 と、星空は身を引く。

「無茶じゃないって。きわめて簡単。教えてやるから、作ってみろ。まずは買出しに行くぞ」

 俺はそう言うと、星空とともに部屋を出た。

 そして、俺たちはスーパーで材料を買った。

 牛のひき肉に、たまねぎ、にんじん、卵など。

 調味料は一通りあるので、それくらいで充分だろう。

 レトルトで済ませることも考えたが、料理ができないと思われるのも癪だ。

 みんなで食べる利点は、こんなところにもあるだろう。

 自分ひとりしか食べないと思うと、どうしても手を抜きがちになる。