そのうちに、隣の部屋から料理が運ばれてきた。

 マカロニグラタンとそば。

 取り合わせが間違ってる気はするが、知の作れる料理がそれくらいしかなかったのだろうということで、まずは納得しておく。

「じゃ、いただきます」

「いただきまーす」

 口々に言い、試食会が始まった。

 見由の部屋からもテーブルを持ち込み、二つに分かれた食卓。

 こっちのテーブルには、知と見由、俺と穂波がいる。

 部屋は狭いので、7人が座るとわりとぎゅうぎゅうだ。
 
 いただきますの合図とともに、食事が始まる。まずは、そばに手をつけてみた。

 少し麺がのびているのと、つゆが濃いのが気になるが、食えない味ではない。

「ふむ、まあ及第点だな、知にしては」

「素直にうまいというように」

 知はそんなことを言っている。

 まあ、あえて本人の気分を害する必要もないだろう。

 続いて俺は、マカロニグラタンに手をつけた。

 見た目はあつあつで、うまそうに見える。

 知にこんなものが作れるはずはないから、見由の作品だろう。

 スプーンで一口すくい、口へと運ぶ。
 
 食物が舌に触れると同時に、口の中に、異様な感覚が走る。

 舌を突き刺すような痛み。

 脳髄まで届きそうな、その刺激。

 この世のものとは思えない。

 そう、あえて言うなら、それは魔王の食感。