達也は一人暮らしの経験が俺より長いから、自炊経験も豊富なはずだ。

「ん? そうだな、一通りのものは作れるぞ。数えたことはないが、20から30くらいのメニューは作れると思う。それがどうした?」

「心の友よ。お前に頼みがある」

「ジャイアンか、おまえは」

 達也の言葉を無視して、俺は言う。

「共同で自炊しないか?」

「何だよ、いきなり。なんかあったか?」

「共同で自炊することによって、料理の腕と友情をともに育む……」

「本音から話せ」
 達也はあっさりと言う。

「仕送りまであと二週間あるのに、金が4ケタしかないんだ」
 と、俺はわざとげっそりした顔を作ってみせた。

「切実な問題だな」

 同情してくれる達也。

 実際、昼食も夕食も食べなきゃいけないのに、一日500円しかないというのは、かなり厳しい状況だ。

「そういうことなら、いいぜ。でもどうせなら、女の子もいたほうが楽しいだろ」

 と言って、部屋にずかずかと入り、俺の家の電話で勝手にどこかにかける達也。

 もしかすると、俺の貧困の原因の一端くらいはこの男にあるのではなかろうか。

「あ、もしもし見由ちゃん? 俺、達也。今すぐ祐介の部屋に集合。うん、よろしく」

 と、まるで独裁者のように命令する達也。

 こいつは俺を呼ぶときもこんな感じだ。

 それから達也は、星空、穂波、知と、順番にかけていった。
 
 そして十五分後、俺の部屋に全員が集まった。

 集合が早いというのは、すばらしいことだと思う。

 俺の人徳のたまもの、とうぬぼれるのは抑えて、みんなの友情に感謝しておこう。