テスト騒動が終わり、学園に平和が戻った六月中旬のある日。

 家に帰った俺は、預金通帳を見て、愕然となった。

 お金がないのである。

 思えば、先月から、食費に金を使いすぎた。

 テスト勝負で負けて、知に一週間昼飯をおごり続けたのも原因だ。

 あの野郎、人の金だと思って、高いメニューばっかり頼みやがった。

 節約しないと、今月終わりには飲まず食わずの生活になってしまう。

 どうしよう。

 いや、考えるまでもない。自炊するしかないのである。

 しかし、俺が作れる食事のレパートリーなど、数限られている。
 
 そんなことを考えているとき、部屋のチャイムが鳴った。

「おーい祐介、いるかー?」

 あの声は達也だ。

 俺は扉を開け、やつを迎え入れた。背の高い短髪の男が、そこに立っている。

「どうした」

「さっき映画のDVD借りてきたから、デッキ貸してもらおうと思ってさ」

「だから自分で買えって。いや、そんなことより達也、いいところにきた。おまえ、自分で作れる料理ってどれくらいある?」