「ま、とりあえず、二人とも部屋に入ったら?」
 俺が言った。

 見由はまだ玄関にいる。達也にいたっては、まだ外である。

「あっ、ごめんね。何もないとこだけど、どうぞどうぞ」

「なぜ穂波が言う?」と、ジト目で穂波を見る。

「ふふっ、ごめんなさい」

 穂波はおかしそうに笑った。

「さて、飲みなおすか?」

 部屋に入った達也は、ビール片手に言った。

「じゃ、改めて、乾杯」

「かんぱーい」

 四人の声が揃い、二次会が始まった。

 星空も知もおらず、酒癖の悪い者がいないので、みんな落ち着いたペースで飲んでいる。

 酒も、あまり減らなかった。

「そういえば、見由ちゃんは、どうして一人暮らししようって決めたの?」

 穂波が、見由に話題を振った。

「私、親が転勤族なんです。中学までは親についていってたんですけど、高校まできたら、一人で生活してもいいかなって」

「へえ、そうなんだ。達也くんは?」

「俺? 俺は、なんとなく。祐介は?」

 なるべくその話題に触れられたくなかった達也は、すぐに俺に話を振った。

 俺も事情は知ってるので、あえて突っ込むようなまねはしない。

「俺は……まあ、一人暮らししたかったからかなあ」

「どうして?」
 穂波が聞く。

「どうしてって言われても困るが……一人じゃないとできないことってあるだろ?」

「同棲とか。Hな本を集めるとか」

 達也が言う。穂波と見由はくすくすと笑った。

「なんでそっちの方向に話を持っていこうとするのかね、達也クン」

 俺は達也のほうをむいて言った。

「いや、心の声が聞こえたので」

「自分のだろ?」

 いつものように、軽いトークに持ち込む俺たち。

 達也と話すと、いつもこんな風に話が流れる気がする。

 まあ、俺もこの流れは嫌いじゃないけど。