そのとき、まるで俺の心を見透かしたように、玄関のドアが開いた。

「ただいまー」

 見由の元気な声がする。
 中に入ろうとした見由は、俺と穂波が二人で仲良く座っているのを見て、顔を赤らめた。

「し、失礼しましたっ」

 見由は慌ててドアを閉める。

「あれ? どうしたの?」

 玄関の向こうから、達也の声が聞こえる。

「あっ、今取り込み中みたいですよ」

 見由はそんなことを言っている。

 なんだか、大いに誤解されてるような気がする。ただ普通に座ってるだけなのに。

 俺は立ち上がって玄関に行き、中からドアを開けた。

「何やってんだ」

 俺が顔をのぞかせると、達也と見由が、一斉にその奥を見る。

「なんだ、穂波ちゃんも来てたのか」

「えっ、知り合いですか?」

 見由が達也と穂波の顔を見比べて言う。

 穂波はそれに反応し、玄関のほうまで歩いてきた。

「ああ、見由と穂波は初対面だっけな。俺と達也の同級生で、品川穂波だ」

 それから、今度は穂波のほうに向き直る。

「穂波。こっちが俺のクラスメイトの、仁科見由」

「はじめまして、よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる見由。

 穂波はそれを見て、不思議そうな顔をした。

「えっと、仁科さん。私、一年生だから、タメ口でいいんだよ?」

「ああ、それは俺たちも何度も言ったんだが」と、俺が横槍を入れる。

「敬語を使うのが癖なんだそうだ」

「へええ」と穂波は感心したような目を見由に向ける。

「すごいね、仁科さん。私と同い年なのに」

「あ、私のことは、見由って呼んでくれればいいですから」

 見由が自分の胸に手を当てて言う。

「わかった。じゃあ、私のことも穂波って呼んでね」