「おい、起きろ」
 頬をぺしぺしと叩く。すぐに、いびきが止まった。

 こちらは、星空よりもまだ幾分かましのようだ。ふらふらしながらも、自分で立ち上がる。

「部屋に帰るぞ」

 俺は肩を貸してやり、部屋を出て階段を上り、二階へと一緒に歩いた。

 しかし、部屋まであと少しというところで、バランスを崩した。

 知が急に寄りかかってきたのだ。

「わ、わっ」

 どてーんと、派手な音をして倒れこむ二人。

 俺は倒れたときに打った腰をさすりながら、立ち上がった。

 知は、何事もなかったかのように、その場で眠りこけている。

 すると、突然、隣の部屋のドアが開いた。

「何やってるの?」

 そこに現れたのは、穂波だった。

 そういえば、知の部屋は穂波の部屋の隣だ。

 さっきの声を聞いて、俺の声だとわかったのだろう。

 玄関の扉を手に持ったまま、俺の方を見ている。

 彼女は薄紺色のカットシャツを着ていた。

 その色が、廊下につけられた蛍光灯の明かりの元に照らされて、暗闇の中に浮かび上がる。

「ちょうどいいところに。悪いけど、こいつを部屋に運び込むのを手伝ってくれ」

「飲んでたの? あきれた」

 穂波はそう言って、本当にあきれた顔をする。

 それでも彼女は、知を部屋に運び込むのを手伝ってくれた。知をベッドに寝かせ、部屋から出る。