「なあ達也、おまえ何かゴールデンウィークに予定ってあるか?」

「特にないな」

 達也はメンチカツ定食のご飯をほおばりながら答えた。

「どっか行くか?」

 ご飯を口に入れたまましゃべる達也。

「そうだなあ……」

 コーラを飲みながら考えていた俺は、達也の後ろに、よく見知った顔を見つけた。

 均整の取れた顔立ちで、肩より長い髪の女子高生。

 そいつは、俺たちに近づいてきていた。

「隣、いいかな?」

「おお、穂波ちゃん。どうぞどうぞ」

 達也は振り返り、口に物を入れたまま返事をする。
 穂波はテーブルの上に、あさりのパスタの皿の載ったトレーを置き、達也の隣に座った。

 穂波は俺たちの中学の同級生で、当然達也とも顔見知りである。

 ちなみに俺たちの座っているのは四人席で、俺の隣には、何も入っていない俺のかばんが置いてある。

「何の話をしてたの?」

 穂波が聞いてくる。

「ゴールデンウィークに何しようかって話さ。穂波は何か予定ある?」

「別にないけど」

 穂波はそう言って、パスタにフォークを絡めた。

「ゆうくん達は?」

「俺たちも別にない」

「あはは、じゃあ暇人同士だね」

 穂波はそう言って、楽しそうに笑う。いったい何がそんなに楽しいんだろう。

「三人でどっか行くか?」

 そういったのは達也だった。

 達也は中学時代から、俺とも穂波とも面識が深い。
 三人でどこかに遊びに行くことなど、しょっちゅうだった。

 まして、今は三人とも一人暮らしだから、出かけることに制約はまったくない。

「私は行ってもいいよ」

「俺も別に構わんけど」

 三人とも行くことには同意するのだが、いかんせん行き先が思い浮かばない。
 海に行くには早すぎるし、遊園地に行っても、三人では乗り物に乗るときに一人余ってしまう。

「カラオケでも行くか?」

 と俺が言ったが、二人にそろって却下された。そんなものは連休でなくてもいけるということらしい。

 ちなみに、達也が出した「秋葉原電気街ツアー」は、光速で俺が却下した。