俺がそう言ったとき、近くから俺を呼ぶものがいた。

 達也だった。テーブルに手をつきながら、話しかけてくる。

「よお、祐介。部活決めたか?」

「いや、まだ。おまえは?」

「俺はラグビー部に入ることにしたよ。やっぱり短い人生、いろいろやってみないとな」

 達也は平然と言った。

「ラグビー部? そうか、おまえ、体ごついもんなあ」

 達也は身長186センチもある。

 体格もしっかりしていて、外見は体育会系の典型みたいな男だ。

 中身はただのオタクだけど。

 それにしても、あたりの強いラグビーとは。

 俺の理想から、最もかけ離れたところにある部だ。

「しかし、おまえのことだから、パソコン部にでも入るのかと思ったぞ、俺は」

「俺が好きなのは、ゲームであって、パソコンじゃない」

 達也はオタクの見本のようなセリフをはいた。

「じゃ、またな」

 達也はそれだけ言うと、帰っていった。

「そういや二人とも、明日のテストはどうなんだ?」

 俺は話題を変えてみた。

「ん、まあ、何とかなるだろ」

「私も、何とかなると思います」

 二人は口々に言う。俺は一つ、ひらめくものがあった。

「よし、こうしよう。俺と知で、テストの点で勝負する。知が勝ったら、俺は美術部に入る」

「おまえが勝ったら?」

「知が俺に昼飯をおごる」

「なんか、祐介一人が得するような気がするぞ」

「気のせいだ」

 かなり無茶な提案をする俺。

 しかし知は、予想に反して、あっさりと俺の提案を受け入れる。

「まあ、いいよそれで」

 さすが俺。口から先に生まれたとほめられただけのことはある。

 誉め言葉じゃないというツッコミは無用だ。

「私とは、勝負してくれないんですか?」

 不思議そうに、見由が聞く。

「んー……なんとなく、見由には勝てないような気がする」

 直感半分、論理半分である。

 こういうタイプは、真面目に勉強しているような気がするのだ。

 それに、両方に負けて、部活を掛け持ちするというのも俺の身が持たない。