「まず運動系は消しだな。めんどくさいし」

「まったく同感」

 俺の提案に、知は素直に同意した。

「次に、応援部は消し。体育会系っぽいし、怖い先輩とかいそうだ」

「それも同感だな」

「残り七つ。俺は書道部は遠慮したい。字汚いし、書くのも好きじゃないしな」

「わかった。じゃあ俺は、吹奏楽部だ。人数が多いし、真面目に練習をやってるっぽい」

 かくして、残り候補は5つになった。しかし、そこからが絞れない。

「科学研究部って、なんかネクラっぽくないか?」
 と知が言うと、

「バカ。そこが穴場でいいんじゃないか。きっとまともに活動なんかしてないぞ。サボり放題だ」と俺が言う。また、

「パソコン部って、俺あんまパソコンに興味ないんだけどな」と俺が言うと、

「いや、パソコンをただで触れるというのは捨てがたい。たいていこういう部は、まともに活動してなくて、ゲーム部になってる」と知が言う。

 とりあえず、お互いサボりやすそうな部がいいということだけは意見の一致を見たので、あとは順番に部活回りをすることにした。
 二人が荷物をまとめていると、そこに見由がやってきた。

「お兄ちゃん、部活決めました?」

 上目遣いで――といっても卑屈になってるわけじゃなく、単に身長が低いからそうなるのだ――聞く見由。なぜか丁寧語である。

「いや。これからこの人と、一緒に部活回りをするとこ」

「じゃ、私も一緒についてっていいですか?」

 俺はそう聞かれて、知のほうを見た。

「俺は別にいいよ。彼女、君の妹?」

「いや、違うんだが、なぜかそう呼ばれてる。説明すると長くなるが」

「説明してみてくれ」

 知は俺に聞く。ここは一つ、かましてやらねば。

「昨日ナンパされてたところを、兄のふりして助けたから」

「長くないじゃないか」

 すかさず知のツッコミが入る。なかなかいいツッコミだ。

「君とは気が合いそうな気がする」

「奇遇だな、俺もだ」

 俺と知は、固い握手を交わした。