11時から、クラスでのホームルームになっていた。

 俺は掲示板の隣にあった地図を頼りに、1年B組へと向かう。

 校舎はなかなかきれいで、近代的な設備も整ってそうに見えた。さすがは私立といったところか。

 教室に入ると、すでに何人かの生徒がいくつかのコロニーを作って談笑していた。

 その中に、見由の姿もある。彼女は俺の姿を認めると、駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん、こんにちは」

「ああ、こんにちは」

 なぜか俺は彼女の中でお兄ちゃんになってしまっているらしい。

 彼女の高校生離れした容貌は、制服を着ても他人の目を引く。

 おまけにその呼び方も重なって、俺たちには好奇の視線が集まる。

「同じクラスになれてよかったですね」

「ああ、そうだな」

 まともに返事をするのが恥ずかしくて、適当に流す俺。

 そのとき、担任とおぼしき先生が教室に入ってきた。

「はい、みんなこんにちは」

 先生はそう言って、黒板に名前を書いた。

 太田秀道。それが彼の名前のようだ。見かけは40代くらい。人のよさそうな男性だ。

 美人の先生が現れて、生徒と禁断の恋に落ちるという俺の妄想は、早くも打ち砕かれた。

 彼は俺たちに、出席番号順に席につくように言った。