「それより、達也のほうはどうするんだ?」

 弁当のふたを閉めながら、俺は聞いてみた。

 屋上だし、人はまばらだから、他人に聞かれる心配はないだろう。

「えっと……とりあえず、クリスマスまでには言おうと思うの」

 星空はもじもじしながら言った。

 この話題になると、とたんに女の子らしくなる、星空だった。

「クリスマスか。長いな」

「持久戦よ、持久戦」

「ま、頑張ってくれ。彼氏彼女のいない奴らで行う、寂しいクリスマスパーティーに出席することのないように祈ってるわ」

「そんなのやるんですか?」
 見由が、無邪気な瞳で聞いてきた。

「知らん。気が向いたらやる。とりあえず去年はやったぞ。クリスマスイブに、俺の家で」

「何人くらい来たんですか?」

「俺と達也。以上」

「不毛なクリスマスパーティーね……」
 星空が、同情するような目で俺を見た。

「ケーキまで買ってな。二人で入刀するんだ」

 まるで結婚式のケーキカットのように、俺と達也で一本のナイフを握って。

 嘘みたいな、実話だった。

「わあ、楽しそうですね」
 笑いながら言ってくる見由。

 この子はどこまで本気で言っているのか、いまだによくわからない。

 あるいは、100パーセント本気なのかもしれない。

「じゃ、見由は参加決定な」

「はい、いいですよ」

 半ば冗談で言った俺に対し、あっさりと肯定する見由。

 あんまりあっさり過ぎて、逆に俺が不安になった。