「ああ、ちゃんと見てるよ」

「ね、どれがいいと思う?」

「そうだな……俺的には、これが一番好きかな」

 俺はさっき穂波が抱えていた、くまのぬいぐるみを手にとった。

「ふうん、ゆうくんの趣味はこれなんだ」
 うなずく穂波。

 ――――いや、決して趣味ってわけじゃないんだけどな。

「ゆうくんが気に入ってくれたなら、これにしよっと。ね、これ買って」

 嬉しそうに、俺に差し出す穂波。

 俺もつられて笑顔になる。

 俺はそれを受け取ると、レジのほうへと向かった。

 値段は5980円。

 今月の小遣いがなくなるが、まあ仕方ない。彼女の笑顔の代償だと思って、我慢しよう。

「包装は、プレゼント用にしますか?」

「はい、お願いします」

 レジの女性店員と、そんな会話を交わす。穂波は、俺の隣に来ていた。

 俺は一言付け加える。

「あと、メッセージカードもつけてもらえますか」

「かしこまりました」

 カードをレジの下から取り出す店員。

 俺はそれに、ちゃちゃっとメッセージを記入する。

「え、いいよ、そこまでしてくれなくても」
 穂波は俺にそう言ってくる。

 しかし、俺はそれを無視して、記入を続けた。

 やがて、店員が俺に、ラッピングしたぬいぐるみを渡してくれる。

 俺は、レジから少し離れたところで、穂波にそれを手渡した。

「はい、プレゼント」

「ありがとう、ゆうくん」
 穂波は両手でそれを受け取った。

「カード、今見てもいい?」

「もちろん」