そして、完全に二人が見えなくなったとき、俺は口を開いた。

「さて、じゃあ俺たちも、飯くって帰るか?」

 今日のアパートの夕飯は、はじめから断ってある。

 従って、それは至極まっとうな発言――――のはずだったのだが。

 俺の予想に反し、穂波は驚いた目でこちらを見て、言った。

「何言ってるの?これから、私へのプレゼント買ってくれるんでしょ?」

「は?」と俺は思わず声に出した。「だって、あれはただの口実……」

 言いかけた俺を無視して、穂波が言う。

「アパートに帰ってから、何をプレゼントしたんだって達也君に聞かれたら、なんて答えるつもり? それに、もしかしたら私に、プレゼント見せろって言うかもしれないでしょ?」

 穂波は当然のようにそう言うと、俺の手首をつかみ、デパートに向けて歩き出した。

 なんか鼻歌とか歌いながら歩いてます。

 上機嫌です、穂波さん。

…………。

…………。
 
 ちくしょう。

 まんまと穂波にはめられた。