そのまま、ジュースを持って自分たちの席へと戻る。
 
 まもなく、後半が始まった。

 後半20分に、相手チームが得点。俺たちの席付近は意気消沈する。

 しかし、残り時間がわずかとなった後半41分、センタリングからこちらのチームがヘディングで同点ゴール。

 一気に盛り上がる俺たち。

 達也も星空も、デートそっちのけで試合に集中していた。
 
 そして延長戦になり、後半14分。こちらのチームの選手によるフリーキックからのゴールが決まり、試合は熱狂的な歓声の中、その幕を閉じた。

 スタジアムを出ても、興奮冷めやらぬ様子の星空と達也。

 大声で、サッカー談義を始めている。

「いやあ、あのシュートがすごかったよねー」

「その前のパスも見事だったし」

 二人はすっかり意気投合しているようだ。

 何も俺たちが心配するほどのことはなかったかもしれない。

 それから電車に乗り、やがて俺たちのアパートの最寄駅に来たとき、それまで機会をうかがっていた穂波が話を切り出した。

「あのさ、二人とも。私たち、ちょっとこれから別行動してもいいかな。ゆうくんが、私に何か買ってくれるっていうの」

 穂波の切り出し方は、すごくうまい。

 これならたいていのやつは、その興味は「何のプレゼントで、どうして買ってくれるのか」という方向に向かうだろう。

「おっ、そうか。じゃあ、邪魔しちゃ悪いな。俺たちは、どっかで飯くって帰るよ」

 案の定、達也は俺に気を利かせたつもりで、そう言った。

「うん、ごめんね」

 笑顔で、小さく手を振る穂波。

 星空が恨みがましい目でこちらを見ているのが少し気になったが、まさかこちらが作った機会をわざわざ放棄するということもないだろう。

 俺たちは二人の姿が見えなくなるまで、別方向へと歩いた。