俺は純粋にジュースが買いたかったのだが、穂波が立ったのは、たぶん星空たち二人に気を使ったのだろう。

「ついでに、俺の分も買ってきてくれ」

「あたしもー」

 星空と達也は、俺たちに小銭を渡した。

 それを受け取って、売店へと向かう。

 売店は、唯一の休憩時間とあって、たくさんの人が並んでいた。

 その列の最後方に、二人で並ぶ。

 この分では、ジュースを買うだけでハーフタイムは終わってしまいそうだ。

「結構、面白かったな」

「うん。試合も、二人もね」
 穂波はにこやかに言った。

「なんか進展あったか?」

 俺の席からは、あまり星空と達也の姿は見えない。

 もしかすると、俺が見てないうちに手くらいはつないでたかもしれない。

「ううん、別に。でも、なんていうか、試合も見たいけど話もしたい、みたいな星空の葛藤が伝わってきて、面白かったよ」

「へえ。そりゃ見たかったな」

 普段のがさつな星空から想像すると、そういう仕草はおかしくもある。

「ゆうくん、この試合って何時に終わるの?」

 だいぶ列も前に進んだとき、穂波が聞いてきた。

「だいたい5時ごろかな」

「終わったら、どうする?」

「そうだなあ。普通なら、飯食って帰るって時間だけど……」

 あの二人をどういうシチュエーションにしてやるか、という問題がある。

 穂波もそのことを聞いているのだろう。

 星空は何もしないでくれといったが、ああ言われると何かやりたくなるのが人情というもの。