「女が好きだとは聞いたことがあるぞ」

「それは……」

 目を細め、あきれた目でこちらを見てくる穂波。

 「男が好きだ」とか言うよりは、まだ健康的だと思うのだが。

「でも、誰も好きじゃないなら、星空にも見込みはあるってことよね」

 すぐに本題に戻す穂波。

「そうだな。まあ、星空のためにも一肌脱いでやるか」

「うん」

 と、無責任に言ってはみたものの、いざどうするかという話になると、二人とも黙ってしまう。

 なにせ、お互い他人のためにデートをセッティングしたことなどないのだ。

「まず、どこに誘い出すかって話だよな」

 とりあえず、俺はそう口にした。

「達也君が行きたいところとかはないの? なにかのイベントとか、お祭りとか」

 穂波が言う。俺はちょっと考えて、

「秋葉原電気祭りかな」
 断言した。

 嘘ではない。現に、達也は先週もそれに行っていた。

「それって、星空は何もできないと思うんだけど」

 穂波は真面目な顔で言ってくる。

「わかってるよ。冗談だ、冗談」

 笑ってごまかしてから、俺は次の案を考えた。

 穂波はいい子だが、いまいちユーモアのセンスに欠ける。

 というか俺のハイセンスなボケにツッこんでくれない。