中学時代につきあってたときは、何度か穂波の部屋に入ったこともあるが、さうす・りばてぃーの穂波の部屋に入るのは、このときがはじめてだった。

 俺の部屋で話すことにしなかったのは、万一隣の部屋の達也に聞こえると困るからだ。

 防音は結構しっかりしてるから、まさかとは思うのだが、用心に越したことはない。

「待ってて。今飲み物入れるから」

「いいよ、気を使わなくても」

「いいからいいから。何が飲みたい?」

「何でもいいよ。任せる」

 穂波はうなずくと、冷蔵庫の前に立ち、何か飲み物を作っている。

 まあ、外は暑いし、俺も多少喉が渇いている。

 何にせよ飲ませてくれるのはありがたい。

 俺はテーブルの横で、カーペットの上にあぐらをかいた。

 少しすると、テーブルの上に飲み物と氷が入った二つのグラスが置かれた。

 その中身はオレンジ色をしているが、オレンジジュースよりは色が薄い。

「これは?」

「オレンジティー。オレンジジュースにアイスティーを混ぜて、ハチミツをたらすの。おいしいよ?」

 初めて見る飲み物だが、おいしそうだ。

 飲んでみると、味も悪くない。上品な甘さがする。

「本当だ、うまいな」

「でしょ?」

 満足そうな穂波。

 女の子っていうのは、こういうところマメだと思う。

 俺なんかは、ジュースに何かを混ぜるなんて、考えつきもしない。

 ジュースはジュース。買ってきたまま飲むだけだ。

「本当は、オレンジの皮を干してから煮て、それで紅茶を淹れれば、もっと本格的なのができるんだけどね」

「へえ」

 穂波ならば、それもやりそうな気がする。