「私、英語だけで二日かかったよ。大丈夫なの?」

「大丈夫だ、俺に不可能はない」

 と言いつつ、英語のテキストを見ていく俺。

 ページをめくるたびに、俺の顔から血の気が失せていった。

 なんでこんなに大量の宿題が出てるんだ。

「すいません、写させてください」

 あっさりとプライドを捨て、頼み込む。

 無駄だと知りつつ。

 星空がそんなに俺に親切にしてくれるはずがない。

 ――――しかし、星空は、首を縦に振った。

「うん、いいよ。はい」

 予想に反して、星空はあっさりとそれを渡してくれる。

 親切すぎて、多少気味が悪い。

「おお、結構マメに書き込んであるな」

 俺はノートを開くなり、そう言った。

 もっとがさつな字かと思いきや、意外と女の子っぽい丁寧な字で書かれている。

「マメかなあ?」

「ああ、大したもんだ。胸張っていいと思うぞ」

 俺がそう言ってから、小声で「無い胸をな」というと、すかさず星空の左ストレートが俺の額を直撃した。

「一言多いっ!」

「先生、痛いです」

 そんなおふざけをしていたら、時間だけが過ぎていく。

 俺は勉強に取り掛かることにした。