そして、一時間が過ぎたころ、俺たちは再び女子のコテージへとやってきた。

 知と見由を除いては、全員が着替えを済ませている。

 星空は、ベッドの上でぐでーっと横になっていた。

 目を開けているから、起きてはいるようだが。

 穂波も、ベッドの上に体を置き、上半身は壁にもたれさせている。

 穂波は人前ではいつも気を張っているので、こういう姿は珍しい。

 よっぽど疲れているのだろう。

「ま、なんにせよ、無事でよかった」
 俺が言う。

「ごめんなさい。崖の下の花を見てたら、足を滑らせちゃって」

 星空が目を伏せて言う。

 さすがにこの女も、しおらしくなっていた。

 怪我は結局足をくじいただけで、大したことがなさそうなのが不幸中の幸いだった。

「私も、助けようと思って降りたんだけど、上がれなくなっちゃって。ごめんなさい」
 穂波はそう言った。

 それが本当かどうかはわからない。

 こいつのことだから、怪我してる星空をほうっては行けなかったのかもしれない。

 たとえそれが助けを呼ぶためであったとしても。

 穂波はそういうやつだ。

「それにしても、よくずっと叫んでたよな。不安にとか、ならなかったのか?」

 今日の救助劇の立役者である達也が聞く。穂波はちょっと首を傾げてから、

「そうね……もちろん不安だったけど、なんとかなるような気もしてた。なんか、ゆうくんが助けに来てくれるんじゃないかって。なんとなくだけど」

 穂波は恥ずかしげもなくそう言う。

 早速、知が冷やかしてきた。

「おい、聞いたか祐介。王子様が助けに来てくれると信じてたってよ」

「うるせ」
 俺は照れながら言った。

「俺も助けにいったんだけどなあ」
 達也は空々しい声でそう言った。

「あっ、もちろん達也君もね」
 穂波は慌てて付け加える。