それから、三十分ほど歩いただろうか。俺たちはようやく、自分たちのコテージへと帰ってきた。

 ドアを開けると、見由と知の視線が、いっせいにこちらに注がれた。

 達也におんぶされている星空と、ずぶぬれの穂波。そして俺。

「お帰り」
 知は何も聞かず、にっこりと笑って、そう言った。

 俺はそのとき初めて、この男が心から笑ったのを見た気がした。
 
 見由が慌ててバスタオルを四枚持ってくる。

 そのバスタオルにくるまれながら、星空はゆっくりと目を閉じた。

 どうやら気を失ってしまったらしい。緊張感から一気に解放されたせいだろう。

「ゆうくん、ごめん。悪いんだけど、私たち着替えるから……」

 穂波が申し訳なさそうな目でこちらを見る。

「ああ、向こうに戻ってる。一時間後にまた来るよ」

 俺たちは、傘を持って、コテージをあとにした。

 実際、俺たちも、穂波たちほどではないにせよ、全身が濡れていて、早くシャワーを浴びたかったのだ。