〜そんなある日〜


「おい、なんかケンカしてるぞ。」


「なんか雰囲気よくないね〜。とばっちり受けなければいいけど…。」


「まったく何やってるんだか…。」


周りの声を聞き、兄弟は不安にかられていた。


「兄ちゃん、大丈夫かな?」


「大丈夫だろ…多分。」


兄弟の不安をよそにケンカはエスカレートしていく。


そして運命の時が訪れた。


ケンカ相手が相手の髪の毛を鷲掴みにしたのだ。


握りしめた髪の毛の一本に弟が含まれていた。


「うわぁぁ!兄ちゃん!兄ちゃーーーん!」


弟は必死に頭皮にしがみつく。


それを見ていた兄は弟に叫んだ。


「絶対に手を離すな!抜けちゃったらゴミ箱に捨てられるぞ!」



ケンカ相手はグイグイと髪の毛を引っ張った。


「も…もうダメ…。」



ブチっ!!



次の瞬間、いくつもの髪の毛達が抜けていってしまった。

その中に弟も含まれていた。


「兄ちゃーん!!」


虚しく響き渡る弟の声。


兄は弟の姿をみて、悲しさのあまり涙をこぼした。

そしてこの衝撃的な出来事を受け、真っ白になってしまった。





そして、弟がいなくなってから、半月の月日が流れた。



「お客さん、白髪がありますけど、どうします?」


「あ、じゃあ抜いといてください。」


そんなやり取りの後、兄の体を理容室の店長の指が力強くつまんだ。


「これで弟のところにいける…。」


兄は弟にまた会えると思っていた。




兄は知らなかった。





ゴミは焼却場で燃やされてしまうことを…。




〜END〜