しゃがんでいると照明がまぶしくて顔がよく見えない。



「あっ、はい、できました。」

「ん、」



私が立ち上がってスタンドマイクの横に立つと

男は靴音を立ててゆっくり近づいてきて、

スタンドマイクの前に立つ。

横に並んでわかった。



「あっおはようございます!」

「ん、」



低い声、全身真っ黒、悪い目つき、

最近徐々に人気が出てきている「ラフメイカー」

というお笑いコンビの一人、矢崎さんだ。



矢崎さんは眉間にしわを寄せてマイクの棒を握ると

マイクの高さを調整し出した。




「あの…、」

「俺ら出番最初やねん。」

「あ、そうでしたね、」



おし、と無表情で小さく言って去って行った。