「うん…って、えぇ!?」


立ち上がって、追いかけてくる、壱。



「ちょ、ちょっと! 待てって」



腕を引っ張られて、あたしは壱の胸の中。



「はなしてよっ! もーやだ、もー壱なんてやだっ!!」



抵抗するけど、中々離してくれない。し離れない。…男の子だから、しょうがないんだろうけど。



「…やーだ。 絶対、離さねぇ…」


低く囁いた。



そんなことに、怒っていたはずなのに、ドキッ、とかしてしまう自分。…キライ。




「…なんで怒ってんの? なんで…帰るなんてゆーの?」



…ずるいよ、壱。


こんなときだけ…




「…やだ、離して…」



「言わねぇと、離さねぇっ」



そう言って、強く抱きしめ、あたしの顔を上げさせる。




壱の目に映ったあたしの瞳には…涙。