突如聞こえて来た足音が、俺の前で止まる―…。
ゆっくり顔を上げると、
『えっ、な…んで…?』
「はい。」
そう言って、カバンから出したハンカチを手渡して来た
両手で涙を拭き取り、一瞬で我に返ると…恥ずかしさが込み上げてくる…
『何でおるん…?』
「ごめんっ、迷惑なの分かってるけど…連絡なかったから…ここにいたら会えると思ったから待ってたの。てか、ハンカチ使って!!」
目の前には…
鼻のてっぺんと、髪の毛から覗く耳を、真っ赤にした花がだ立っていた…。
受け取ったハンカチ越しに感じた花の指先は、これでもかって位に冷たくて…、
『何時間…待ってたん?』
なんて、無意識に聞いていた。
「30分くらい…かな?」
『うそつき。』
「うん。嘘ついた」
『寒いから、家…行こっ』
花の返事を待たずに、腕を引っ張り
家に向かって歩き出した。
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