――ガチャ
静かな廊下に鍵の開く音がやたらと響く…。
『どうぞ』
そう言い残し、先に家の中に入り部屋の電気を付けると
後ろから「お邪魔します…」って、遠慮がちな声が聞こえて来た。
『何もないけど。苦笑』
「綺麗にしてあるんやなー…」
そう言って、部屋を見渡す花。
綺麗してあるんじゃなくて、必要最低限の物しか置いてないだけ。
寝る為だけの我が家に、余計な物なんていらないし…
『適当に座ってて』
キッチンに行き、コーヒーメーカーのスイッチを入れ、
しばらくすると、珈琲の良い香りが鼻を刺激して来る。
両手にカップを持ち、花の元へ向かう…
初めて、女の子を家に招いた。
今まで殺風景やった部屋も、人がいるってだけで
心なしか明るくなった気がする…
『はい』
カップを花の前に置き、向かいに座る
「ありがとう。頂きま〜す」
フーッフーッと湯気の立つ珈琲を冷ます姿に
不思議な気持ちになった…
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