ドアの向こうには、30代半ばくらいの

ビシッとスーツを着こなした、サラリーマン風の男が立っていた。



「こんばんは。突然すみません」



見た目通り、上品な喋り方は
イントネーションからして関西の人じゃない。



てか…どこかで見た事があるような…。



心なしか酔った頭で、必死に記憶を辿っても…
どこだったか思い出せない――。




『…あの、』


「今日は、光君に話があって来ました。上がらせてもらっても…いいかな?」



俺の名前…何で知ってるん?!

てか、返事してないのに…

勝手に上がり込んじゃったよ。このオッサン!!




『ちょっ、勝手に上がらないでくれん?』


そう言って、腕を掴むと
ピタッと足を止め、俺の方に振り返った。



「君にとっても、空にとっても、大事な事なんだけど?」


『…なんで、空の事―…。』




――…

―――……



気がつけば、掴んでいた手を離し…

部屋の中に案内していた――。



『その辺にどーぞ?』



謎の男をリビングに残し、キッチンに向かった俺は

身も知らずの人の為に、わざわざ珈琲を入れてあけてる最中。




「こんな時間に本当に申し訳ないです…仕事が終わって、そのまま電車に乗り込んだんで…。」



壁越しに聞こえて来た声は、ほんまの事なのか

疲れてる様に感じた。



『構いませんよ。俺もちょうど休みやったし』


「どうしても、どうしても…今日、光君に会わなきゃいけなかったんてず。こちらのワガママで申し訳ないです…。」






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