『ん?』
ずっと、逸らしていた視線を
花に向けた。
「ありがとう。」
[大っ嫌い]って言われるならまだしも…
ありがとうって―…。
それも、何でか分からないけど…今まで見て来た中で、一番の笑顔で…
『早く…行け。』
俺、散々酷い事して来たのに…
八つ当たりも一杯して来たのに…
何で、笑えるんだよ?
「それじゃあね…?」
――バタン
ゆっくりと、玄関のドアの閉まる音が聞こえて来て…
1人になった部屋は、無駄に広く感じ、
空のいない寂しさと、花がいなくなった寂しさが分からなくなりそう―…。
これで、いいんや。
空の事しか想えない、俺なんかの事は忘れて
他の男と幸せになったらいい。
今日からは、ほんまに空の事だけを想える。
そう思ったら、悲しくなんかないのに…涙が出て来た。
.