「ごめん!今度埋め合わせするから、今日の約束パス!!」
「えぇ〜!!仕方ないな〜」
両手を合わせて、悪びれた様子もなく言う蓮さんと
そんな蓮さんの言葉に不満そうな表情をしながらも、すんなりと人込みに消えて行く客の女。
「店、行くぞ!!」
『…………。』
黙って、蓮さんの後を着いて行き
店につくと…表の札を“close”にしたまま中に入った。
「まぁ、適当に座れや。」
カウンターに座ると…目の前に空のグラスが置かれ、勢い良くビールが注がれる
「んで、そんなホストみたいな格好して、誰かの葬式か?」
今は、蓮さんの冗談にすら笑えない―…。
『………っ、』
「おいおい…、どーしたんや!?泣いてんのか?」
人前で泣くなんて情けないけど…勝手に出て来るんやから
止めようがない……。
『そ…らが―…。』
「空ちゃん?」
『…うん。』
「まさか…空ちゃんの…?」
返事をしたくない俺は、目の前に置かれたビールを
乾いた喉に、一気に流し込んだ。
ゴクゴクって音が耳にダイレクトに伝わり
耳障りさからか、思わず顔をしかめた。
「おいっ!!そんな冗談…笑えねえぞ…?てか、お前…会ったんじゃないのかよ?約束してたんやろ!?」
『あの日…、蓮さんにバイク借りたやん?それさ…病院に行く為だったんや…。妹から連絡が来て…空が車に跳ねられたって―…。』
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