ゆっくりと、包丁を首まで近付けて行く。


『情けねぇ―…。めっちゃ、手…震える…』



自分でも分かる位、手が震えて
額から汗が零れ落ちた。




バンッ!!




「ひ…かる…?」



タイミングを見計らったかの様に開かれたドアの先に
目を真っ赤にしたオカンがいる



「な、何してるの!?」



たいして広くもない部屋の中を、慌てて駆け寄って来て
握っていた包丁を無理やり奪い取られた



『返せや!!』


「嫌よ!!こんなモノ持ち出して何するつもりなん!?」



久しぶりに聞いた、オカンのヒステリックな声は

昔より、衰えた様な気がした…。



『見ての通り。もう俺の事は忘れて下さい。空の事…邪険に出来たんやから、俺の事だって邪険に出来るやろ?やから、そのまま忘れてくれ。ほんまに頼む…。』



オカンの目の前で、床に額を擦(こす)り付けて
土下座をする。



「光……。」




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