『愛実。尚……なおって男……か』



彼は、ブツブツ呟いている。



彼の声は、あたしははじめて聞いた。いつもは、当てられても口を開かないから、先生達は諦めている。



友達は、最初は集まっていたが、何も話さない彼にイライラした男子達は彼に近付かなくなった。



頭は良くテストはそれなりに良い点らしく、先生に誉められているのはいつもの事で……



でも話さないから、会話が成立しない。


そんな彼の声は、この学園であたしがはじめて、聞いたのかもしれないとさえ思うほどだ。



『……もう時間か』


ヤバい!!彼が来る……



ガタ……



っ……い、たた……


慌ててここから去ろうとしたあたしは、入り口の側に詰まれた何かに躓いた。



『誰か居るのか?』


セクシーボイスで、彼が言う。きっとあたしの事は、知らないと思う。



あたしが一方的に知っているだけで、同じクラスだけど話したことないし。