そんな俺に、綾崎先輩はずるいなって一言だけ言ったのを俺は、忘れないだろう。



プロだって、必ずちょっとは失敗する。中学生だった、しかも素人の俺が、一発で成功するはずなんてないってそれを言いたかったんじゃないかって、今なら思う。



昔は、ヒーローに憧れて、良く自分の声をテープに録音していた。



それをたまに、引っ張り出しては、聞いてたのを思い出す。


引っ越しの時に、一緒に持って来た、一個のテープ。



少し、聞き取りずらいが、マネージャーはそれを狙っているらしい。



ファンに売ったら、そこそこ値が張るからと言っていたが、あげるつもりはない。



俺の初心を忘れないための、テープなんだから。