「俺がお前になっても、十分いけんな」



一瞬びっくりした。急に、女の人の声がしたから。



渋谷くんは、女性キャラもしているんじゃないかって程、とてもうまかった。



お世辞なんかじゃなくて、本当にうまかった。



普段の声からは、どうやっても想像がつかない。



渋谷くんの声は、高くて、なんでもこなせる渋谷くんは、あたしの中じゃどんどんすごい人になっていく。



ピッピッピ…



アラームの音に渋谷くんは、慌てたように、台本を片付け始めた。



「わりぃ、仕事だから」



「あ、うん、大丈夫。頑張ってね?」



渋谷くんは、ああと一言呟くと、空き教室を出て行ったのだった。