「アンタ、読むから聞いててくれよ」



アンタか……しょうがないか、まだあまり話したことないし。



少し不満に思ったけど、あたしはなんともない表情をして、耳をすませる。



あたしの耳元には、渋谷くんのセクシーな声と、風の音が聞こえる。



「お前が……だろ?」


渋谷くんは、感情を込めて言う度に自然に、あたしは物語の主人公になった気分で、聞いていた。



普通に棒読みだったら、きっと何も思わないだろう。



でも、ちゃんと感情がこもっているため、聞きほれてしまう。



そこら辺の役者よりもうまく、まだ二十歳なんて信じられない。



あたしは、椅子に腰掛けながら渋谷くんの横顔を見つめていた。



髪を耳元にかける仕草が魅力的で、それが癖なんだなと思った。