「俺よりもそいつが好き?」


巧となんて、比べたくない。

でも諦めてもらわないと、あたしはその人に突っ走れない。


あたしは静かに頷いた。



「誰だよ、そいつ」


巧は哀しそうな顔で聞いた。


その顔を見ると、彼の名前なんて絶対に言えなくなった。



「言えないの?…俺と仲良い奴ってこと?」

「っ、それは……」

「たーくみー」


おーい


そう言いながら教室の入り口で巧に向かって彼は手を振っていた。