森の主も心配する中、僕は不安な表情のまま草たちで籠を編みました。

土ごと五本の花たちをそれに詰め、ロマが口にくわえられる様に籠に取っ手を付けました。


全ての準備が整い、僕は風たちにロマの事を頼みました。

僕は一緒には行けません。

エマの家までの道案内を、ロマの背中を押してくれる様に…。
そして、
ロマや村人たちの様子を、随時僕たちに知らせてくれる様にお願いしたのです。


ワンッ!
『行ってくる!』

ロマは花たちと共に、嬉しそうに足取りも軽く森を進んで行きました。
森の主は、出来るだけ村人の目に触れない森の入口へとロマを導きました。


僕は森の主の幹に触れ、風たちの情報を待ちます。


ザワ…
『…触れていて大丈夫かい?ロマ以外の情報も入ってくるかもしれん…』

彼は僕を心配しました。
先程の様な村人たちの声が、僕に伝わってしまう事を恐れていたのです。


「…大丈夫です。ロマも頑張ってくれているのですから。僕だけ辛い事から逃げるわけにもいかないのです…」

大丈夫。
冷静に、冷静に…。

今はロマやエマの事に集中して、酷いようですがその他の事には心に蓋をしてしまえば良かったのです。