「…ロマが…?」
ロマは村へ行った事もなければ、村人たちと会った事もありませんでした。
エマにさえ、
会った事がないのです。
それでも行く、
花たちの想いがそれほどに強く、ロマに訴えかけていたのでしょう。
ワン。
『土ごと運ぶ。そこの草たち、自分たち切り取って良いって言ってる。入れ物、作る。』
長い草たちの根を残して葉だけを切り、それで花たちを土ごと運ぶ籠を編めと言うのです。
彼ら草の生命力が強い為に、すぐに生えるから大丈夫だとロマは僕に伝えました。
それでも、
僕は心配でした。
ロマは、犬竜。
村人たちにとっては見た事もない未知の生物です。
受け入れられるでしょうか。
「…大丈夫でしょうか…」
ワン!
『大丈夫。俺、歩いてく。飛ばない。飛ばなければ翼目立たない。ただの犬。花たち、連れてく。花たち、咲いたってエマに見せる!』
ロマは一生懸命でした。
花たちもサワサワと身を揺らし、その想いは僕にも伝わりました。
ザワッ…
『…この森の植物たちは皆、エマが好きなんじゃ。ロマを行かせるのは心配じゃが…。花たちの折角の想いを、無駄には出来んからのぅ。』