ワンッワンッ
『ユラ。花たち、呼んでる。』
これまで静かに僕らの傍らに居たロマが、ぴくりと顔を上げ、急に鳴き出しました。
「…花たち?」
ロマは駆け出すと、森の主の傍らに咲く白い花たちの周りを一周しました。
咲いたばかりの花でしょうか。
僕にも、微かにしか声が聞こえません。
「…ロマには花たちの言葉が分かるのですか?」
ワン!
『俺、分かる。俺の属性、地。声、伝わる。』
僕は驚きました。
彼の属性は、「地」。
大地を通して、大地に根をはる植物たちの声が伝わると言うのです。
「…何と言っているんですか?」
ワン。
『花たち、エマの友達。エマが心配。エマに元気分ける。エマの所、連れてけって言ってる。』
「…え?」
森の主が困惑していた僕に言いました。
ザワ…
『…その花たちはなぁ、エマが村から種を持ってきて育てていたんじゃ…。して、今日な、花が開いた…』
「…しかし、連れていけと言われましても…」
折角、エマが育んだ可憐な命を、摘み取っていくわけにもいきません。
それに…、誰が…
ワンッ
『俺、行く!花たち、一生懸命。俺が連れてく!』