かなた「もちろん、その部下、誘拐未遂犯と言った方が適切かな?そいつはそのまま逃走。まさかこうなるとは思っていなかったんだろうね。」



かなた「で、はねられた美瑠ちゃんは意識を失い、病院に搬送された。意識を取り戻したのは2週間後だった、検査の結果は一部の記憶障害。」



美瑠『そんな・・・』



かなた「美瑠ちゃんが一部の記憶障害で失った記憶は、事故当時と幼稚園生活での記憶。小さいながらに恋し、両想いだった男の子の事も一欠けらの記憶も残さずに消え去った。」



美瑠『そんな、そんなの冗談よ。』



かなた「本当だよ、美瑠ちゃん。大企業の大手会社の社長の娘が事故にあったことはマスコミに知れ渡った。でも、美瑠ちゃんの父親はマスコミや新聞記者に口止め料を払い、報道するのを禁止した。」



かなた「何故、報道したら犯人が見つかる可能性が出るかもしれないのに、そこまでして報道させないのか。それは、報道したら記録に残るでしょ?だから美瑠ちゃんが大きく育った頃、幼稚園の記憶が無いのを不思議に思うことは絶対に訪れる。美瑠ちゃんが調べて、報道の記録が見つかったら、美瑠ちゃんはショックを受ける。」



かなた「だから、美瑠ちゃんの父親は今後の美瑠ちゃんの将来が穏やかであることを1番に願い、報道されるのを拒んだ。」



美瑠『嘘でしょ・・・。嘘って言ってよ!』



かなた「そうやって泣くと思って君のお父さんや事情を知ってる人は君の過去を隠すんだ!!」



かなた君の大声に、嘘は見受けられなかった。
できれば嘘であってほしい。



涙も止まることなく、まるで目の前にある海のように溢れ続ける。



美瑠『・・・』



真顔で真剣に言われてしまえば、疑えない。



かなた「まだまだ続きはあるけど、話し続ける?それともやめる?」



かなた君のその言葉は私に、


過去に立ち向かう?それとも逃げる?


そう聞かれているような気がした。



美瑠「・・・逃げない、逃げないよ。話して、話し続けて。」