――病院も退院して学校にも無事に行った、その翌日。
今日は金曜日。
知っての通り、デートの前日。
あの名前も知らない謎の男とのデートだけど、待ち合わせ場所も時間も決めていない。
もう忘れちゃったのかな?
もし、そうなら翔の過去をしれないけど、でもラッキーだな。
軽く助けてもらったうえに条件取り消しだなんて良すぎる。
「美瑠ちゃーんっ」
聞き慣れない声だけど、どこか親しげに私の名前を呼ぶ声の方に振り返った。
うん、ラッキーなんてことはないんだ。
きっちり覚えてるよ、あの謎多き男。
考えてれば、やって来るのね・・・。
莉奈「あの男誰よ!何よ?随分と親しげぢゃないの」
遥華「翔がこの場にいなくて良かったね、陸と隼人も。」
うん、翔がいたら本当危ない。
おそらく喧嘩売りにでもかかってるか、そのまま謎の男を連行していただろう、とつくづく思うよ。
美瑠『ごめん、色々と事情があって。機会が合ったら話すよ。』
機会が合ったら話すよ、とは言ったものの、話せる訳がない。
土曜日デートなんだ、なんて尚更言える訳がない。言う訳がない。
そんなことを考えながら、謎の男のいる教室の扉へ向かった。
「明日のことで来たんだ!・・・誰もいない場所行こっか!」
莉奈と遥華の毒針でも刺すかのような謎の男に向ける視線を見てしまったから場所を変えるんだ。
この男の子、随分と面白い。
「ほら、ぼーっとしないで着いて来て。」
そう言って私の手を取って歩き出した。
その動作があまりにも自然すぎて、何故かふわふわする気持ちになるような気がする。